11歳 雑種の雌 体重11.8kg 栄養状態はやや肥満。

症状:今朝より突然、食欲元気なし、腹部を触ると痛がるとのことで来院しました。体温39.8度C 普段は神経質で凶暴な犬でしたが、全く元気なし。腹部の触診で痛みを感じているようなので、このため各種検査を行なうこととしました。

レントゲン検査
 
ラテラル像において、
異常な所見が見られた。


腹部エコー検査所見
 
腹部エコー検査で脾臓中央に
発生した腫瘤物を認めました。



開腹手術

開腹により腹腔内は大量の出血
がみられていて、その原因は脾臓
に発生した腫瘍が破裂したものと
判明しました。

脾臓表面中央に発生したリンパ腫


脾臓背面のリンパ腫の破裂部位


脾臓では血管肉腫が多く肝臓に
 転移をしていないか、生検実施。



病理組織検査所見
脾臓内にはリンパ球の腫瘍細胞の増殖が認められ、リンパ肉腫と考えられ、
転移性と思われる。また生検した肝臓において、わずかに転移の所見が見られる。
弱拡大
強拡大
「治療および経過」
手術後は飼い主さんは化学療法剤治療を選択しました。
ドキソルビシン30mg/m2 3週間隔(6回投与の計画)しかし、5回目の投与前の検査でALTが510 U/Iと増高のため2週間ほど治療の延期をした。その後は飼い主さんの希望もあり化学療法剤の投与は中止としました。
当初は脾臓の極めて悪性の血管肉腫を疑いましたが、病理組織検査では脾臓のリンパ腫との診断でした。肝臓にもわずかに同様の細胞が見られため、積極的な化学療法を行ったことにより転移は免れた非常に稀な例であります。このわんチャンは術後3年を経過しており、リンパ腫は完全寛解を得られたものと思われ、現在はまったく化学療法はおこなっていませんが、状態は良好であり今年14歳を迎えます。
「主治医の意見」
このように早期発見、早期の手術により良好な経過をとる例も多数あり、リンパ腫でも摘出だけだと数ヵ月で転移して死亡する例が多く化学療法剤の投与により反応したものと思われました。来院当日、開腹するか否かの判断に正直なところ迷いましたが、脾臓に明瞭な腫瘤物が見られたことや、腹部の疼痛を伴う臨床症状を重視して手術に踏み切ったことが功を奏したもので、腫瘍は腹腔内で大量の出血を起こしており、放置しておけば恐らく死に至ったものと思われました。高齢になってくると、飼い主の方の普段からのわんちゃんの注意深い観察が重要だと思われ、今回の例もそれによって救われたものです。